社団法人 日本電気制御機器工業会

情報制御技術を活用した農業生産システムとこれからのフードチェーンへの展望」

富士電機株式会社 食品流通事業本部 流通システム事業部長 NECA 次世代事業WG 平山 博之 氏

平山 博之 氏

1.なぜ富士電機が植物工場を

富士電機は基本的に重電の会社であるが、電子デバイスからパワーエレクトロニクス機器、産業インフラ、発電・社会インフラ、そして食品流通まで事業領域が幅広い。食品流通事業では自販機分野と店舗流通分野があり、後者では店舗内ショーケースや店舗省エネに加え新たな価値創造に繋がる食のバリューチェンの確立を目指し、安全・安心、鮮度維持とおいしさに資する高品質流通に貢献したいと考えた。これは政府の方針と富士電機の方向性が一致しており、その最も川上にあるのが、自社の持つエネルギーや冷熱、システム技術が活かせる植物工場である。

2.植物工場における課題と対策

2014年3月に、北海道、道経連の支援を受け、ゼネコンや金融機関などと共同で苫東ファーム(株)を設立、農産物の生産及び販売を開始したが、事業を推進する上での課題とその対策は次の通り。

①事業化検討フェーズ

課題1:
事業推進に適した用地選定
《対策》 気象条件やアクセス、インフラ、コスト等から北海道苫小牧市を選定
課題2:
植物工場の強みを活かしかつ地元農家に影響を及ぼさない栽培品目
《対策》 Kg単価が高く、国内供給量変動が大きいいちごに決定
課題3:
建築基準法や農地法など法規制に対応
《対策》 道や市と協議を重ね計画の見直しや粘り強く確認を実施

②事業計画策定フェーズ

課題1:
売れるものを作るマーケットイン型の出口戦略に基づく販路確保
《対策》 出荷量や時期など顧客ニーズを踏まえた施設規模や導入設備を決定
課題2:
事業採算性のある初期投資額、設備
《対策》 大規模化によるスケールメリットを追求し導入設備や仕様等を検討
課題3:
エネルギーコスト、特に使用化石燃料の低減
《対策》 ベンチ暖房による局所空調と木質チップボイラー、ヒートポンプによるハイブリッド暖房

③建設フェーズ

課題1:
大型植物工場プラントのノウハウ不足
《対策》 実績を有するパートナーと密に連携、作業標準を策定し技術やノウハウを共有
課題2:
気候的な制約による夏季工事での作業者確保
《対策》 社内のほかパートナーも通じ作業者確保、工事分散による集中化回避
課題3:
定植時期が決まっている状況下での短期間立ち上げ
《対策》 部材事前搬入、工事方針統一による工期短縮

④栽培フェーズ

課題1:
栽培技術、ノウハウの不足
《対策》 植物生理や施設運用に関する知見を有する経験者を採用しスムーズな立ち上げ
課題2:
自然エネルギーを利用した室内環境制御
《対策》 各種計測データを一元管理するなど総合的に細やかに制御し、狙った環境を高精度で実現
課題3:
変化する雇用状況のなかでの本事業推進のための必要人材確保
《対策》 周年栽培による所得向上、結果として地域雇用創出に寄与

⑤出荷フェーズ

課題1:
製品の信頼を維持・向上するための選果
《対策》 作業者が手選果することで製品の痛み、劣化を抑止
課題2:
高鮮度を維持し製品を消費地までデリバリー
《対策》 収穫直後から適正温度下で保存、定温管理された状態で消費地まで届ける

3.おわりに

農業は人が生活する上で最も基本的かつ重要な産業であるにも関わらず未だに経験と勘に基づく慣行的な栽培が大勢を占めている。また従事者の高齢化やTPPによる影響なども含め様々な課題があるが、市場環境の変化はイノベーションが起こる最大のチャンスでもある。日本が有する地域資源や技術力、人材などを総動員すれば農業が新たな成長産業となる可能性は十分にある。その実現に向け、これまで培ってきた技術や経験を活かし、日本ならびに世界の農業の発展に貢献したいと考えている。

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