社団法人 日本電気制御機器工業会

講演⑤ AGC旭硝子におけるSA/SBA資格制度を活用した機械安全の推進

AGC 旭硝子株式会社 執行役員社長付 松尾 時雄

松尾 時雄

本日は、当社の紹介、当社の安全成績の推移、安全衛生の方針、機械安全への取り組みと成果という流れでお話を進めていきます。

AGC旭硝子は、2017年で創業110年を迎えるガラスメーカーで、2014年の売上1兆3500億円、営業利益621億円です。日本、アジア、欧州、北米、南米にある国や地域に約5万人の社員がおり、これら社員のみならず協力会社も含めた方々の安全確保に努めなければなりません。グループ施策を推進するためには、共通の考え方の浸透と共通の基準に基づく実行が重要です。

当社の重要ポリシーの一つである「安全なくして生産なし」は、安全啓発ポスターにも表現されています。この基本ポリシーは、社長のリーダーシッブに基づき、グループ全体で共有するために12か国の言語を用いて制作され、世界で120か所ほどある拠点の各職場に掲示されています。

ガラス製造業は、重厚長大型の装置産業です。その製造ラインの全長は600mくらいあり、上流から原料を投入し、板状になったガラスを自動切断して製品化していきます。自動車用ガラスでは、さらに、切る、曲げる、貼り合わせる等の加工ラインがあり、こちらの全長は100mくらいになります。重篤災害につながりやすい大型設備では、「無事故で頑張れ」という精神論だけでは災害を減らすことが困難です。そこで、設備の本質的な安全化を目指すべく、今から20年以上前、国際安全基準に対応する機械類の社内安全基準作成に取り掛かりました。

その当時のJISはまだ機械安全規格が充実しているとは言えず、ドイツ規格の勉強から始めて社内基準に反映しました。その後ISOやIECが充実してきたので、2009年に機械類の安全基準を大きく改訂しました。その作業に先立ち、2006年からはセーフティアセッサ資格認証制度(以下SA資格制度と略す)を導入し、事前安全審査制度規定や工事施工安全基準といった追加社内規定も整備されていきました。その成果として、当社および取引先で設備安全が理解できる人材の育成が推進され、設備供給者と当社の設備技術者が設備の安全設計に関し、共通の言葉でコミュニケーションできるようになっていきました。

また、我々が機械安全をさらに推進するにあたっては、国内の製造技術者や中国、東南アジアの生産拠点技術者とも機械安全の思想に基づくコミュニケーションが必要であると考えました。そこで、SA協議会へお願いしてセーフティベーシックアセッサ資格制度(以下SBA資格制度と略す)を設定して頂き、主に製造技術者に向けて2010年から積極的に資格取得推進を図りました。

一方、現場では機械安全と生産性の両立が大きな問題となりました。国際安全基準に合わせた安全防護などにより、当初はチョコ停や故障対応に伴うライン停止で生産性が落ちたため、稼働率が低下しないような前向きな設備の改造が促進されました。

例えば、自動車用ガラス加工ラインではサーボモータを数百台使っており、相互に同期しながら動きますが、一度止めると再起動が大変でした。地道な改造や改善行為により、1年かけて目標の稼働率まで引き上げました。この成果は世界中にある同種の設備に反映され、お客様である自動車メーカーへ毎日ガラスを供給しています。

設備技術者向けに推進しているSA資格制度については導入当初より設備メーカーやエンジニアリング会社にも資格取得をお願いしており、我々の累積資格者数はお取引先を含め約600名、また当社製造技術者向けに推進しているSBA資格についてはアジア各地でも講習と資格試験を行って、資格者は約1500名(お取引先を含め日本約900名+海外約600名)となっています。設備のライフサイクルを通じた機械安全の確保のために、SA資格制度の有資格者は設備の設計、製造、試運転に技術を生かし、SBA資格者は、運転、保全、改造などに安全の知見を活かしています。

設計時にリスクアセスメント(以下RAと略す)を行うことには、設備を作る前に本質的安全を予め織り込むことによって、機械装置のコストアップを低減するという効果があります。更には設計時だけでなく、現地据え付け導入時にRA、使用中(改造も含む)にRA、設計から廃棄に至るまで、設備のライフサイクルを通じて責任部署や関係者が相互に補完しながら機械安全を確保します。これらの取り組みの成果の一つですが、当社の日本・アジア拠点における設備(機械)への挟まれ・巻き込まれ災害が全労働災害に占める割合は14%となり(日本製造業平均30%)、災害件数そのものも導入当初より低減しています。

重要な事は、経営トッブが安全の重要性を浸透させることです。機械安全の推進は、我々のように大型の機械や連続ラインで構成される製造業では特に有効です。共通の技術を皆で理解して、RAの有効性の向上を目指すことが大切です。今後も、引き続き重篤災害の撲滅を目指して活動を続けていきます。

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