社団法人 日本電気制御機器工業会

講演③ 爆発性雰囲気における安全の考え⽅と要員認証スキームを含むIECEx 国際認証制度のご紹介

Chairman of the IECEx System Dr. Thorsten Arnhold

Dr. Thorsten Arnhold

私は防爆分野で20年以上にわたり標準化に関わっており、直近の7年間はIECExのドイツ統括、2014年からはIECEx議長を務めています。

IECは現在160以上の国が参加しており、国際標準化と適合性評価の2つの柱をもって活動を行っています。標準化については参画する当事者にはそれぞれ異なる目的や狙いがあります。例えば規制当局(政府)は職場の安全化や地域経済の活性化、といった狙いがあり、メーカ(企業)は製品を提供することによる利益の創出、エンドユーザは信頼性の高い製品を安く入手、試験場や認証機関、コンサルタントなどは活動フィールドが広がるよう、新しい規格が増える事を望んでいます。また、各国独自の規格などはそれぞれが出来る限りその内容を維持したく、こういった様々な駆け引きの中で標準化プロセスは進んでいきます。

防爆関係はTC31が取り扱いをしています。TC31では爆発性雰囲気の中で使用する電気機器の使用に関する国際標準を作成・維持しています。標準の作成にはまず提案国の委員会がDocument for comment(DC)とよばれるたたき台を作成し、これをもとに委員会原案(CD)、委員会投票用原案(CDV)あるいは最終国際規格案(FDIS)の審議を重ねて作成していきます。そして加盟国の過半数の賛成を経て国際標準として発行されます。

次にIECExシステムについて、業者やステークホルダーにとってどんなメリットがあるのかを紹介します。IECExは技術製品の安全性を取り扱っています。「技術製品の安全性」を車に例えるなら、これまでの経験や事故事例の研究を通じた改良や新技術の投入、といったことに相当します。しかしこれでも事故がなくならないのは使い方の問題です。すなわち、まず正しい製品を選択しているか、必要な技術知識や能力を身につけているか、適正レベルのメンテナンス(定期点検や修理)が実施されているかということです。

このことが防爆製品にも適用できます。危険区域での使用とそれに必要な保守、適切な人員が考えられます。製品は設計、試験、生産、すべて仕様に照らして行う必要があり、仕様はIECの標準に照らして定義しなければなりません。設置時の安全でも、適切な製品を選ぶこと、設置区域を確認し、充分な知識と技能を有するオペレーターを配置することが必要です。

IECExは防爆製品に関する正しい製品・仕様の選択、運用、保全に至る製品ライフサイクルの安全に関する全てをカバーしています。防爆製品の分野では、各国が独自規格を制定しており、ある国のメーカーが海外に製品を輸出しようとした場合、輸出先各国の防爆規格の適合証明が無ければ輸出が出来ません。それぞれの認証が発するメッセージは、すべて「製品は安全だ」というだけに過ぎません。これは全く以ってメーカと消費者の時間と費用の無駄遣いです。

この様な問題を解決すべく、90年代初頭にIECでは世界的な認証制度の構築に取り組み始めました。IECEx防爆機器認証制度のめざすところは、全世界で一つの基準、1枚の証書、1枚の認証マークを以って各国の証明に代えようとするものです。現在オーストラリアとニュージーランド、そして直近ではイスラエルがIECの適合証書を受け入れています。

もちろんIECの適合証書の受け入れを行うことによって安全性が低下した、事故が増えたと言うことはありません。他方、独自の規制を設けている国の場合はともかくとして、規制すら制定されていない国においては如何に安全を保証するか、その水準を引き上げるかが大きな課題であり、この様な国や地域においてはIECExの適合証明こそがその技術水準を証明する根拠となっています。

また、IECEx02(手続き規則)の5.6において、いずれか1カ国の適合証明があれば他の国はその適合証明をを受け入れして自国の適合証明を発行する、ということを規定しています。これにより、メーカーはある国で適合証明を受けられれば、他国でもその証明が受け入れられて適合証明をうけることが可能となることから、大きな成果となっています。

IECExは3つのスキームを運用しています。最初に始めたのがサービス認証を含む機器認証スキームです。機器認証スキームは主に製品に対して適用され、一度認証を受けるとそれが維持されているかを確認するために定期監査を受けなければなりません。この認証スキームが修理などのサービスやそれを担当する作業者のスキルの認証などにも応用できる事を見出し制定されたのがサービス認証スキームです。IECExサービス認証スキームの有用性については、機器が高額で置換えより修理・オーバーホールの需要も高く、IEC60079-19やISO9000シリーズその他詳細要件を作業工場やオペレータが満たしているかを評価する必要から開始されました。また、サービスを実施する個々の作業者の知識や技能、経験といったものを客観的に評価、認証するスキームとして、要員認証スキームを制定、運用を始めています。危険分野では新規設備の計画や据付、検査、保守等さまざまな機能があり、それらを11の能力単位規定して、11の能力を組み合わせてパッケージ化することにより必要な認証を受けられ、その適格性を評価しています。そして3年ごとの更新時に同様にその「能力」を有しているかが確認されます。そして運用文書や手続き規則等の文書は、HPからすべて無償でダウンロード出来ます。またオンラインのデータベースがあり、すべての個人能力証書が閲覧可能です。

IECExシステムは、世界のさまざまな地域をつなぐ橋と捉えており、それがゆえに防爆機器やサービスの国際的な取引が可能になっています。そして安全な職場、世界の事業の繁栄をもたらすことが出来ると考えています。

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