社団法人 日本電気制御機器工業会

講演③ 第4次産業革命時代の安全イノベーションを創造する人材育成制度

日本電気制御機器工業会 制御安全委員会 委員長 藤田 俊弘

藤田 俊弘

世界的に第4次産業革命を迎える時代となり、安全の重要性が益々高まり、それに伴い安全が理解できる人材の育成に世界中の関心が集まっているという背景から、本日は、我々NECAの活動の一部をご紹介したいと思います。

NECAは3つのS(Safety、Standardization、Sustainable Society)を重要施策として活動しています。この中でも、第4次産業革命を迎える中で“Safety”と“Standardization”がますます重要な時代になっています。ここでは、NECAが推進しているセーフティアセッサ資格制度(以下SA資格制度)の概要と、ロボット革命や第4次産業革命時代におけるその資格制度の重要性、そして今後の展望として、将来に向けたNECAとIECとの国際標準化における連携について述べさせていただきます。

国際安全規格は基本安全規格(A規格)、グループ安全規格(B規格)、個別機械安全規格(C規格)の3階層で構成された優れたものでグローバル社会で広く活用されています。しかしながら機械メーカの設計者やユーザがその規格の内容を十分理解して実践することは容易ではありません。そこでNECAは経済産業省の基準認証事業の中で、2004年に日本認証(株)などと協力して、設計者やユーザが安全の実現過程で生じる様々な疑問(例えば、機械のリスクアセスメント手法など)を解決できるようにするため、SA資格制度を2004年に創設しました。本制度はセーフティリードアセッサ(SLA:金)を頂点として、セーフティアセッサ(SA:銀)、セーフティサブアセッサ(SSA:銅)、そして2009年に、「国内外の現場で働く方々にも安全の基礎を理解し活用して欲しい」というAGC旭硝子様のご要望にお応えし創設した、セーフティベーシックアセッサ(SBA:アルミ)を加えた4階層で構成される機械安全の要員資格認証制度です。従来、労働安全を主流として安全を推進してきていた日本では困難であったグローバルに通用する安全の考え方を正しく理解できる人材を育成するために、資格制度として運用しています。この制度により、様々な職務のスキル要件に応じた「安全能力レベル」の正しい評価ができます。現在では約1000社の企業がこの制度を導入し、資格者総数が累計で1万名を超えるまでになっています。自動車業界をはじめ、設備機械、鉄鋼、工作機械、精密機械メーカなどでご採用頂いており、また国内だけでなく海外でも約600名の資格者(SBA)を輩出しております。AGC旭硝子様では、ご採用直後から事故発生件数が低減しており、この様な実績と有効性はIECなど国際的にも高い評価を得ています。2014年には厚生労働省から「機械安全教育対象者に関する通達」で推奨していただき、更なる発展が見込まれています。

本制度は発展途上のアジア地域での普及も期待されています。製造ラインが人からロボットによる自動化に移行する中で、システム構築を行うためには、国際規格に則った安全化が必須です。ですから機械メーカのみならず、エンジニアリングする企業、あるいはメンテナンスするユーザも含めて安全が非常に重要になってきています。NECAでは海外展開の第一歩として、経済産業省のODA事業でタイへのSBAの移管を実施しました。タイ人がタイ人を教育し資格運用する仕組みを構築して制度を運用可能にしました。タイではODA事業継続の中で順次上位資格も導入していきます。

次に、ロボット革命や第4次産業革命実現におけるSA資格制度の必要性と発展性 について述べます。

昨年末に国内では「国際ロボット展」や「システムコントロールフェア」が開催され、ドイツでは「SPS/IPCDRIVES2015」、産業自動化システムの安全に関する世界で唯一の国際会議である 「SIAS2015」が開催されました。また、国内では日経BPが提唱するSafety2.0のコンセブトを打ち出すシンポジウムが開催され、IoTや第4次産業革命、国際標準化、人-ロボット協調安全に沿った安全の新しい流れがやってきています。ロボットメーカも人とロボットの協調する環境を新たなテーマとして打ち出し、社会実装に踏み出しつつあります。その成功には人-ロボット協調における安全の確立が不可欠です。ロボットは旋盤や加工機のような完結製品と違い、半完結製品のため、制御機器など各種機器を組合せて完結製品とする必要がありますが、安全のためには、ロボットメーカ、機器メーカ、システムインテグレータとユーザ各々が十分な安全の知識を持ち、リスクアセスメントを行い次にバトンタッチする、という一連の流れが重要となります。当然、新たな安全方策や安全技術の開発が必須になり、その前提として正しくリスクアセスメントができる「安全のプロ」が必要となります。そのため人-ロボット協調安全の時代となり、SA資格制度の重要性が、一層高くなると感じています。

一方、日本でも、来るべきロボット革命・第4次産業革命に対応する技術・市場に向けて国際標準を準備していこうとしています。私が参加する経済産業省主催のCSO(Chief Standardization Officer)による意見交換会では、IECやISO等の最新動向を議論しています。そして、NECAではこの我々のSA制度の取組みと実績を評価いただいたIECとMOU(相互協力覚書)を結び、どのようなことが国際標準の場で出来るのか議論を始めました。

最後に、今後の展開について私の考えをお話します。

日本はSIASにおいてドイツに次ぐ2番目の提案力(論文数)を誇ります。2015年のドイツ大会でも、セーフティアセッサ制度について人とロボットの協調を含めた視点で発表し、大きな注目を集めました。従来はロボットが人の存在を認識して動く・動かないの2値であったものを、中間の値(低速など)を選択する多値で制御し、そこに要員認証による「安全能力レベル」の概念を取り入れるというものです。教育システムとしてだけ運用していた要員認証が、具体的に製造現場でも活用される可能性があります。

今後もSA資格制度の発展とグローバル化の推進、MOUを締結したIECと意見交換をし、人-ロボット協調に代表されるロボット革命・第4次産業革命、この来るべき時代に備えたいと考えますので、皆さん一緒に推進していきましょう。

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