最初に、日本の農業の現状についてお話しをさせて頂き、その後、スマート農業の実現に向けた政府の動きや研究開発の状況を知って頂こうと思う。
まず、我が国の農業の実状について 、日本の農業従事者の平均年齢は66.5歳で、65歳以上の割合が61%を占める産業である。この65歳以上の方々が、今後働く年代で無くなっていくことから、労働力の確保が深刻な問題となってきている。さらには、もう一つの農業の実状を示すものとしては耕作放棄地(栽培されていない面積)が広がってきている問題がある。日本の農地の面積455万haに対し、耕作放棄地は約40万ha(滋賀県程度の面積)あり、毎年徐々に増えている状況であり、この二つの問題が今の日本の実状を示している。
このような流れの中の一つの解決策として、スマート農業分野があると考えている。政府として農林水産業や地域の活力を取り戻すため、2013年末に「農林水産省・地域の活力創造プラン」を取りまとめ、次の4つの方向性を示している。
一つ目は、需要フロンティアの拡大(輸出需要や地産地消需要の拡大)。二つ目は、需要と供給をつなぐバリューチェーンの構築(農林水産物の付加価値向上や6次産業化推進による農業・農村の所得増)。三つ目は、生産現場の強化(農地中間管理機構による農地の集約)。四つ目は、多面的機能の維持・発揮(日本型直接支払制度創設 等)。このプランの中に今日のテーマに関連して二つの事項が組み込まれている。一つは次世代施設園芸拠点の整備推進(集約された施設園芸クラスターの形成によりエネルギー供給から生産、調整から出荷までを一気通貫して行う)。二つ目はICT・ロボット技術導入により、新たに超省力、高品質生産を達成するスマート農業の展開を打ち出している。
スマート農業については様々な定義の仕方はあるが、ITのテクノロジーやロボット産業等、我々日本の強みを農業に活かして行く事が、競争力強化と問題解決に繋がると考え、「スマート農業の実現に向けた研究会」を立ち上げ、2014年3月に次の中間取りまとめを行った。
先ず①の将来像として最初に作った標語は、〜「先端技術×農業」で世界をリードする新たな農業を日本で創ろう〜というテーマを掲げ、次の5つの実現出来る可能性を例として示した。
次に②のロードマップについては、技術的課題を段階的にクリアして行き、研究開発で終ることなく現実的に農業の現場に一つずつ実現して行く。
③取組み上の留意事項(問題点)として
最後に新しい政府の動きとして、2014年9月から“ロボット革命実現会議”を進めており、ロボットが日本の鍵を握ると考え、5ヶ年のアクションプログラムを作った。その戦略の柱の一つが農業であり、次の二つの目標を掲げて推進している。
このため、導入実証や開発に対する支援等の措置を行っているところである。
いずれにしても日本の農業は厳しい状況であるが、その中で技術は農業を成長産業化させる為の一つのポイントであり、新たな可能性を拓く分野としてスマート農業に力を入れて進めて行きたいと考えている。