社団法人 日本電気制御機器工業会

開催スピーチ「スマートシティとスマートコミュニティ」

駐日欧州連合代表部 通商部 一等書記官
Dr. Uli Wienrich
Dr. Uli Wienrich

EEUではスマートシティとコミュニティ(以下SCC)の重要性がより高まっている。域内GDPの80%は都市部で生み出されている。都市部人口は2050年には域内の85%まで増加し、その重要性はますます高まる。他方エネルギーの70%が都市部で消費され、CO2排出量は全体の75%に至る。また渋滞による損失コストはGDPの1%に相当し、都市をいかに高度化して合理的で持続可能な環境へ変革するかが大きな課題である。スマートアーバンテクノロジーは課題達成に大きな役割を果たすと期待されるが、革新的な新技術の導入は政府調達や投下資本の回収不確実性などの障害により長い年月を要する。EUは行動により市場の活性化を図るため2011年6月にSCC戦略を制定し、翌12年に8,100万ユーロの予算で輸送分野とエネルギー分野の実証試験を実施し、翌年7月にはSCC欧州イノベーションパートナーシップ(以下EIP)を立ち上げた。2013年には3億6,500万ユーロの予算を基に輸送、情報通信、エネルギーの3分野を総合したソリューションの実証試験を実施することで自治体や企業の戦略的協力関係で都市システムやインフラへのスマートテクノロジー導入が促進されることを目指す。各都市は独自システムや事情を持っているが共通の課題もある。EUは20/20/20 goalsという目標を掲げている。これは2020年にエネルギー効率の20%向上、再生可能エネルギーのシェア20%、温室効果ガス排出量の20%削減を目指す政策である。スマートシティ化にはエネルギー、情報通信技術(ICT)、輸送の3分野の統合が不可欠であり、その実現には新しい市場を創出することが重要である。そのためにEUは大規模な実証プロジェクト、いわゆる『灯台プロジェクト』を実施している。これは実験室レベルの革新的な技術を実際に都市で検証し、順次複数の都市へ適用していくプロジェクトであり、ここで得られた成果をもとにして将来の政策や標準化が検討されている。このプロジェクトのガバナンスはハイレベルグループとステークホルダープラットフォームの2つで構成される。前者はEU委員会の諮問機関としてSCCの戦略的実施計画(SIP)の指針を示し、SIP推進の方向性の助言を与える。後者はオープンな組織でSIPへの意見具申や知識の交換、協力関係の創出を担っている。分野横断的なテーマはスマートサプライとデマンドシステムや持続可能な都市交通など、また、手順の最適化や統合のための戦略計画立案などがある。EUはこれまでも多くの戦略プロジェクトを実施してきたが、今回初めて運輸、エネルギー、情報通信の分野を統合した新しいプロジェクトを実施することとなった。これまでの政策の成功例に「Covenant of Mayors」プロジェクトがある。これは地方自治体が自主的にエネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの利用促進によりEUのCO2削減目標を超えた削減を実現することを目指している。また、「コンチェルト」プロジェクトは化石燃料の削減や再生可能エネルギーの利用促進、エネルギー効率向上による需要抑制を実証した。SCC戦略は「道具」ではなく「新しい手段」であり、需給双方に関連する。また、欧州連合、各国政府、地方自治体レベルで関連する当事者が共同で社会的な問題に取り組んでいる。SCC戦略はこのようなEIPのひとつである。SCC戦略の今後については、まず欧州理事会の承認を経た後、ハイレベルグループが2020年までの戦略実施計画を策定し、地域政策との連携や需要側の方策を含めた統合的なプロジェクトを立案・運営していくことになる。イノベーションは欧州の競争力の源泉でありエネルギー効率向上のための最良の手段である。EIPにより高効率の冷暖房、スマートメーター、オンデマンド管理、ゼロエネルギービルなどのソリューションがより多くの欧州の都市で普及するであろう。

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