社団法人 日本電気制御機器工業会

セーフティアセッサからのメッセージ

デンソーのモノづくり安全の取組み「セーフティアセッサとリスクアセスメントの実践」

デンソー 工機部第2技術室 下原史靖氏

1.デンソーの概要
弊社はスタータ、ハイブリッドシステム、ラジエータ、フューエルポンプ、カーナビゲーションなど様々な製品を製造する自動車部品総合メーカーである。弊社はモノづくりに強いこだわりを持ち、自社製品生産用の設備を自前で製作している。これら設備の安全は、モノづくり手法を規定した社内基準に準拠させる事で、維持向上に努めている。


2.グローバル化への対応
近年、設備安全に関する国際規格の制改定、労働安全衛生法の改正、機械の包括的な安全基準に関する指針の通達など、法規制が強化されてきている。弊社においてもリスクアセスメント手法の導入などの対応を開始した。
社内基準の改定作業では、災害・事故から学んだ対策手段に対し、リスクアセスメント手法にもとづきその妥当性を確認し、自社の安全文化を継承しつつ、国際規格との整合がとれるよう取組んでいる。
すでに生産現場で稼動している機械に対しては、災害危険度評価表、作業のリスク評価シートを策定し、現場のリーダーが中心となり、危険箇所を体系的に発掘し、危険認識の共有を図り、改善、感性の向上が図れるしくみを構築し展開した。
現在、これらを試行しリスクアセスメント手法のベストプラクティスを追求している。

3.事例紹介(カナダプロジェクト)
カナダオンタリオ州にある弊社の工場では、2009年より新ラインが稼動する。同州では量産開始前に、公的機関による安全審査が全設備に要求されているため、審査での指摘・修正はプロジェクトの計画に支障をきたす懸念があった。そこでセーフティアセッサが中心となり、以下の項目に取組み対応した。

●3-1. リスクアセスメント手法の検証
今回のプロジェクトは、弊社のリスクアセスメント手法を検証する絶好の機会である。まず、設備毎の設計方針を統一する為、プロジェクト開始前に審査官をカナダより日本に招聘し、カナダの法規制、文化・慣習を確認しながら、デンソー流モノづくりの理念、ノウハウ、経験を明文化した社内基準の是非を、リスクアセスメントという共通言語と尺度で、審査官と議論した。その結果をもとに、カナダ特有の事項を盛込んだ「カナダ向け設備仕様書」を制定した。この活動を通じて、グローバルに適用可能な設備安全の必要・十分条件を満足する社内基準が確立できた。
さらに「カナダ向け設備仕様書」にもとづいて設計製作された全設備に対し、完成後、セーフティアセッサと社内の設備検査部門でリスクアセスメントを実施した。ここでは仕様書で網羅できていない箇所、残留リスクの洗い出しを徹底した。その結果、今まで見落としていた残留リスクの発見もあり大きな成果があった。そして輸出前にも再度、審査官を招聘し国内事前審査を実施、仮承認を取得し現地審査の確実な合格を目指した。
●3-2.新技術の導入
「カナダ向け設備仕様書」の制定で、審査官より現行社内基準の安全制御回路の信頼性不足が指摘された。安全制御回路の信頼性の向上では、入力信号、制御機器の二重化等、機器点数の増加によるコストアップのジレンマに陥った。そこで大幅に機器点数の削減に繋がる新技術の導入を検討し、今回は安全制御回路のソフトウェア化を採用した。そこでの課題は、従来の配線方式からソフトウェア化された事で、修正・変更が容易化になることに伴う、安易な改造等による安全品質のばらつきの発生であった。そこで制御機器メーカーにニーズを投げかけ、協力を得て、各設備共通の部分をパッケージ化する機能を追加し、それにアクセス制限をかけることにより、安全品質の均一化を実現させた。

4.まとめ
リスクアセスメントによる設備の安全性評価により、潜在的危険源の層別と可視化が出来、職場災害防止に寄与できる。
セーフティアセッサによるリスクアセスメントは評価者によるばらつきが少なく一律の安全確保ができる。さらにリスクに応じた対策手法を社内基準で明文化することで、より効果的な安全対策が実現できる。リスクアセスメントはモノづくり安全の世界共通言語と尺度であり、これを活用する事により日本のモノづくりの国際競争力向上につながる事を実感した。
今回の事例のように、ユーザーとメーカーが一体となり、より良いものを開発し市場に出すことで市場の規模も拡大し、それが安全技術の進化・発展につながるものと考える。
最後に、安全で働き易い職場づくりこそが生産現場の心のゆとりを生み、製品品質・生産性向上への最善策につながるものと信ずる。

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