社団法人 日本電気制御機器工業会

Smart Greenhouse Horticulture– Consultancy and business development for horticulture and food industry」

Managing Director, CoHort Consulting, The Netherlands Mr. Oscar Niezen

Mr. Oscar Niezen

施設園芸と農業に関する事業開発の助言を、東アジア・中東を中心に行ってきた。今回は、スマート園芸について、欧州・北米・東アジアでの例、近い将来の見通し・ボトルネック・提言を報告する。

1.イノベーション

施設園芸のイノベーションに必要な技術領域は、下記の通りである。

  • ・種子・育苗
  • ・温室設計
  • ・冷暖房・遮光カーテン・潅漑・肥料などの設備
  • ・播種システム、梱包ライン、収穫ロボット、施設内搬送システム
  • ・環境制御システム
  • ・水耕栽培用培地(ロックウール・ココナッツ繊維)
  • ・収穫後のハンドリング〜冷蔵
  • ・植物工場などの新しい技術

技術開発時の目標設定は、生産者の利益を第一に考えなければならない。ここで言う利益とは、“PPP”すなわち、People(人)・Planet(地球環境)・Profit(利益)のバランスを考慮する必要がある。

技術イノベーションの目的は、下記の通りである。

  • ・省エネルギー
  • ・人件費の削減
  • ・持続可能性・環境影響への考慮
  • ・食の安全
  • ・食の安全保障(人口増への対応)

本講演では、省エネルギー化の例として3種類の最新システムを紹介する。

①(半)閉鎖型温室と新しい育成システム

半閉鎖型温室では換気窓をなるべく閉じ、CO2濃度を高く保つことで、収量を上げることができる。また、光・温度を適切に保つことができれば、格段に効率を上げることが可能である。たとえば、熱帯では栽培が難しかったイチゴやトマトの栽培も可能になった例もある。

さらに、外気と温室内の空気を混合し、CO2濃度を高く保ち、水・肥料の混合割合を調整することで、省エネルギー化と収量の改善が見込める。このシステムはオランダでも最新のシステムとされ、北米で同様のシステム導入が増加し ている。

②土壌中(帯水層)蓄熱システム

オランダで20年前に開発され、北欧・北米・中国に広がり始めた省エネシステムである。

このシステムは、粘土層の間にある、帯水層に2本の井戸を掘り、それぞれの井戸に温水と冷水を保存し、冷暖房に使うことで、4倍のエネルギー効率改善が見込める。さらに冷暖房用の燃料も削減できるので、環境影響への低減も可能となる。

2013年には中国でも導入実績があり、省エネ効果が認められた結果、中国全土への展開が決定した。

③地熱エネルギーの利用

火山などの温水を温室暖房に活用する。地熱エネルギーは、井戸の数により規模を調整できることがメリットである。天津(中国)の例では、深さ2kmの井戸を11本掘り、30haの温室を暖房している。

ドイツ、オランダ、中国では2〜3kmの井戸を掘削する必要があるが、火山国ではもっと浅い井戸で十分である。日本は、火山が多く地熱が豊富なのにアイスランド・ドイツ・ケニアよりも、地熱利用が進んでいないことは残念に思う。日本にとって、技術と潜在力の揃った代替エネルギーなので、地熱エネルギーの活用が進むことを期待する。

2.マーケットのイノベーション

技術のイノベーションだけではなく、マーケット分野でも新たな流れが出てきている。そのキーワードとして、以下の項目が挙げられる。

  • ・安全・安心な食品
  • ・バラエティに富んだ、もっと楽しい食品
  • ・Eコマースに代表される生産者からの直接購入
  • ・生鮮輸送の進化

特に旧来の複雑なサプライチェーンからEコマースや生鮮食品スーパーなど、生産者と消費者を直接結びつける新たなサプライチェーンが、日本だけでなく、アジアでも増えてきていることが注目される。

3.日本の状況

日本の特徴は下記の4点が挙げられる。

  • ・従来型の小規模生産者が多く、効率が悪い
  • ・品質・品揃え・安全・健康面で最高水準の消費者要求があることが強み
  • ・植物工場などのハイテクにフォーカス
  • ・大規模農業は導入が始まった段階

植物工場は、大きな可能性はあるが、現状では実験レベルといわざるを得ない。温室農業での主要生産物に対して は、太陽光を人工光に置き換えることは、簡単ではなく、研究開発段階である。実態よりも報道が先行しているのが現状と感じている。

4.全世界での協力の必要性

日本の人口は減少傾向だが、世界の食料問題は、人類全体の問題であり、残された時間は少ない。食糧問題への対処は先進国の責務であり、今ある技術を早く使って、より改善すれば、投資を抑えることが可能である。このような状況では、日米欧で重複した開発は避けるべきで、オランダには世界での施設園芸の経験があり、各国の協力こそ重要である。

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